[世論ブリーフィング 第102号] 住民投票後の福祉政局と階級政治の台頭
[世論ブリーフィング 第102号] EAI・YTN・中央日報・韓国リサーチ 共同企画 8月 定例世論バロメーター調査
与党支持層の朴槿恵氏への集中現象と文在寅(ムン・ジェイン)シンドローム
1. 住民投票をめぐる韓国社会:復元が必要な住民投票、勝者は誰か?
2. 住民投票後の政局の変数
3. 主要政治指標:効果のなかった8.15共生発展論
【ソウル市住民投票をめぐる韓国社会】復元が必要な住民投票、勝者は誰か?
■ ソウル市初の住民投票に焦点が当たった無償給食範囲に関する住民投票は、結局投票箱を開けることもできずに幕を下ろした。選挙3日前に呉世勲(オ・セフン)市長がソウル市長職をかけた公約により、呉市長はソウル市長職の辞任を表明した。これにより、2012年の総選挙、大統領選挙に先駆けて新たな前哨戦が設けられることになり、政局は住民投票局面からソウル市長補欠選挙局面へと急激に転換している。すでに一部の政治家による次期ソウル市長への立候補宣言が出ているかと思えば、10名余りの予備候補群が噂されている。
■ しかし、住民投票局面から選挙局面への転換があまりにも急激に進んでいるようで憂慮される。今回の住民投票は、今後の大統領選挙政局の核心アジェンダとして浮上する福祉アジェンダの基本哲学と方法論の議論を内包しており、類例を見ない投票ボイコット運動の中で行われた投票であるという点で、韓国社会の福祉認識全般および今回の住民投票に対する政界の対応全般についての復元が必要である。
■ 福祉問題は、進歩と保守、与党と野党の立場が極端に対立してきた敏感な事案であるだけでなく、いかなるイシューよりも国民の生活に直結したアジェンダである。実際の福祉政策が正しい方向へ進むためには、どのような立場を取るにしても社会的な合意が必要である。今回の住民投票の過程を見ると、我々の社会で福祉問題に関する社会的な合意がいかに脆弱であるかが如実に示された。事実、福祉の中でも極めて細部的な懸案の一つである給食問題でさえ、政治的な調整を通じて方向を定めることができず、住民投票を通じて決着をつけなければならないことが妥当であったのか、これに対する野党の住民投票ボイコットという対応は適切であったのか、詳細に検討しなければならない。
■ しかし、給食政策およびさらには福祉路線に対する政策対決の場となるべきだった住民投票の過程が、投票参加対拒否という投票率争いに陥り、結果的に投票率未達により投票箱を開けることさえできなくなったため、ソウル市民の意思を直接把握することが不可能になった。これに対し、与野党間では恣意的な解釈が乱舞している。ハンナラ党は、民主党の投票拒否運動にもかかわらず、去るソウル市長選挙で呉世勲市長が得た票より多い25.8%の投票率を記録し、各種調査で呉世勲市長の案に対する支持が高かったという点を挙げて「事実上の呉世勲市長の勝利」と評価した。民主党は、「悪い投票に対する善良な市民たちの善良な拒否が悪い市長の悪い投票についに勝った」としながら、投票拒否運動の成果を積極的に評価し、「3無福祉シリーズの拡大」を公言している。
■ 住民投票直後の8月27日に実施された8月定例調査は、政界が性急に選挙局面へ転換する前に、住民投票過程で現れた韓国社会の福祉認識について、より真摯な検討と、今後のより総合的かつ多次元的な福祉言説の発展に寄与するという準備のもとで行われた。既存の抽象的な水準の普遍福祉論と選択的福祉論の二分法を越え、より総合的な福祉論争へと発展する契機となることを願う。また、住民投票の過程で現れた問題点に対する省察と評価を通じて、困難な状況下で作り出された政治参加の場が、何ら成果のないハプニングで終わらないことを期待する。
1. 勝者なき8.24住民投票:「ハンナラ党の勝利」6.6%、「野党の勝利」23.5%、「勝者なし」70.0%
■ 住民投票結果に対する与野党の視点の違いとは異なり、国民の目には住民投票の勝者はハンナラ党でも民主党でもなかった。呉世勲市長の勝利を宣言した洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表の考えとは異なり、今回の投票結果をハンナラ党の勝利と解釈する立場は6.6%に過ぎなかった。洪準杓代表の立場に同意する立場は、ハンナラ党支持層からでさえ11.2%に過ぎなかった。民主党と野党の勝利と見た国民は23.5%で、ハンナラ党の勝利と見た回答者より多かった。しかし、国民全体の70.0%はハンナラ党も野党も勝利したとは見ていなかった。民主党支持層では、民主党と野党の勝利と見た回答者が46.9%で過半数に迫ったが、49.5%はどの党も勝利しなかった結果と見た。特に無党派層では、今回の投票の勝者はいなかったという立場が83.0%に達した。
[図表 1] 8.24住民投票評価:勝者はいなかった(%)
● 政治的冷笑と両批判論:「政策対決の失踪」(72.1%)と「住民投票拒否に共感できない」(60.0%)
■ 結果的に呉世勲市長の選択的給食案が敗北し、野党が主張した普遍的無償給食案が貫徹されることになったが、野党の勝利と見ることに対して渋るのは、このような評価はソウル市史上初の政策懸案に対する住民投票という意義にもかかわらず、今回の住民投票が与野党間の福祉政策をめぐる政策対決として行われず、あまりにも党利党略的な政治過程によって左右されたという政治的な不満が作用したと見られる。また、結果的に投票率未達で住民投票は成立しなかったため、野党の構想が功を奏したのは事実であるが、野党の住民投票拒否運動もまた、政治的冷笑と不信を強化させたものと見られる。「今回の選挙で政策対決よりも政治争点が影響した」という評価に72.5%が共感した一方、民主党および野党5党が推進した住民投票拒否運動についても、共感した割合は35.1%、共感しないという回答は60.0%に達した。
[図表 2] 住民投票過程で現れた政治的不満:政策対決の失踪と投票ボイコット(%)
● 与野党の住民投票対応に両批判論が強い:ハンナラ党が間違っていた 73.3%、民主党が間違っていた 66.2%
- ハンナラ党支持層「ハンナラ党が間違っていた」62.5%、民主党支持層「民主党が間違っていた」60.2%
■ 国民の目には、大統領候補放棄、市長職をかけたという超強 수를打ち福祉ポピュリズムに対抗した呉世勲市長とハンナラ党も、住民投票拒否という極端な手段で対抗した民主党も、好意的に見られなかったと判断される。今回の住民投票に対するハンナラ党の対応が間違っていたという評価は73.3%に達した。民主党の対応も間違っていたという評価は66.2%となった。ハンナラ党支持層でさえ62.5%がハンナラ党の対応が間違っていたと回答し、民主党支持層でも民主党が間違っていたという回答が60.2%だった。無党派層では、ハンナラ党が間違った対応をしたという回答が73.5%、民主党に対しても間違った対応をしたという回答が70.8%に達した。
■ 直ちに無償給食住民投票推進過程で、住民投票のフレームを歪曲(普遍対選択の対決を全面対段階論の対決に代替)させることで住民投票拒否の論理を与え、結果的に投票率を満たせず住民投票が不発に終わったことについては、呉世勲市長とハンナラ党に責任を問う世論が強かったが、住民投票署名初期過程での無気力な対応と住民投票拒否運動という極端な選択をした民主党に対しても否定的な評価が支配的だった。勝者なき投票だったという評価を裏付ける結果である。
[図表 3] ハンナラ党と民主党の住民投票対応評価(%)
● 前月比ハンナラ党支持率2.8%p(38.6→35.8%)下落、民主党支持率6.2%p(28.8%→22.6%)下落
■ 政党支持率においても両党の支持率が共に下落した。ハンナラ党は7月調査で38.6%だったが、8月調査では35.8%と、誤差範囲内で2.8%p下落した。民主党も7月には28.8%だったが、今回の調査では22.6%と、ハンナラ党よりも下落幅が大きかった。ハンナラ党の場合、選挙終盤に保守層の結集現象が現れ、支持率下落幅を縮めたものと見られる。民主党は、投票フレームで市教育庁案が除外されたことで、初期支持層内部の投票ボイコットをめぐる葛藤を相当部分解消したものの、投票拒否運動過程で支持層の結集度が緩和され、中間層からの離脱が相対的に大きかったと見ることができる。
[図表 4] MB(李明博大統領)支持率およびハンナラ党/民主党政党支持率(%)
■ ハンナラ党の場合、進歩層での支持率が前月30.2%から18.4%へと大きく落ちたが、中道層では前月33.7%から31.3%へと2.4%p下落にとどまった一方、保守層では50.1%から53.0%へと2.9%p上昇した。反面、民主党は保守層で21.8%から16.0%へと5.8%p下落し、中道層で30.8%から24.2%へと6.6%p下落した。民主党は進歩層でも36.2%から30.9%へと5.3%p下落したことが分かった。
[図表 5] 中道層におけるハンナラ党/民主党政党支持率の格差(%)
2. 8.24住民投票の結果が大統領候補に与えた影響
● 呉市長のイメージ失墜:世論戦では勝利、投票では敗北、しかし保守層ではイメージ改善効果
住民投票前後のイメージ悪化:悪くなった 34.1%、良くなった 20.9%、現状維持 39.7%
ハンナラ党支持層では良くなったが優勢:改善 32.7%、悪くなった 20.0%、現状維持 42.1%
■ 住民投票が失敗に終わったことで、呉世勲市長のイメージは住民投票前後に悪化したことが分かった。全体回答者の20.9%のみが良くなったと答えたが、悪くなったという回答は34.1%とより多かった。変わらないという回答が39.7%となった。しかし、ハンナラ党支持層では逆に良くなったという回答が32.7%で、悪くなったという回答20.0%を上回り、少なくともハンナラ党支持層では、呉市長の大野党への強硬姿勢が肯定的に評価されたものと見られる。しかし、ハンナラ党支持層でも42.1%は以前と変わらないと答えた。
[図表 6] 住民投票前後の呉世勲市長に対するイメージ変化(%)
● 朴槿恵(パク・クネ)前代表のイメージ:現状維持 58.9%、良くなった 18.1%、悪くなった 13.3%
● 孫鶴圭(ソン・ハッキュ)代表のイメージ:現状維持 55.6%、良くなった 13.9%、悪くなった 17.7%
■ 住民投票前後に、与野党の代表的な大統領候補への支持率に与えた影響を見るために、朴槿恵前代表と民主党の孫鶴圭代表に対する考えが変わったかどうかを尋ねた。大きなイメージ変化はなかった。朴前代表については、以前と変わらないという回答が58.9%で、孫鶴圭代表については55.6%が変化しないと答えた。しかし、朴前代表は良くなったという回答が18.1%、悪くなったという回答が13.3%で、若干良くなったという回答が上回り、全体的に住民投票が朴槿恵前代表に不利に作用しなかったことを示唆する。反面、孫鶴圭代表の場合、良くなったという回答が13.9%、悪くなったという回答が17.7%で、むしろ悪くなったという回答の方が多かった。
[図表 7] 朴(パク)前代表と孫(ソン)代表に対する住民投票前後のイメージ変化(%)
● 大統領選挙予備候補支持率:朴槿恵(パク・クネ)優位は依然として、孫鶴圭(ソン・ハッキュ)の弱さを틈(ひま)に文在寅(ムン・ジェイン)の台頭が顕著に
朴槿恵(パク・クネ)34.6%で前月と同じ、文在寅(ムン・ジェイン)9.0%で2位、孫鶴圭(ソン・ハッキュ)6.3%で3位
■ 今回の住民投票過程で、呉世勲市長とハンナラ党の親李明博(イ・ミョンバク)派から住民投票への消極的な態度について圧力を受けた朴槿恵前代表は、大統領選挙支持率の上でも大きな打撃を受けなかったことが分かった。次期大統領選挙予備候補支持率で、去る7月に続き34.6%の支持を受け、不動の1位を維持した。
■ 反面、孫鶴圭代表は、去る4.27補欠選挙後、5月調査で12.0%に達した後、6月8.0%、7月8.2%と停滞していたが、今回の8月調査では6.3%に落ち、9.0%の支持を受けた文在寅(ムン・ジェイン)理事長に2位の座を明け渡した。4位は次期ソウル市長として言及されている韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相(5.3%)で、先月より3段階上昇し、柳時敏(ユ・シミン)代表が4.5%で5位、大統領選挙不出馬宣言と市長職辞任を発表した呉市長が4.3%で6位、金文洙(キム・ムンス)知事が4.1%で7位だった。
[表 1] 次期大統領候補支持率の変化(%)
* 金斗官(キム・ドゥグァン)慶南(キョンナム)知事は2011年1月より調査対象に含まれ、文在寅(ムン・ジェイン)理事長は2011年5月より追加
** 2011年3月調査より固定電話RDD方式調査
● 文在寅(ムン・ジェイン)2位に躍進。進歩層での支持率上昇が文在寅(ムン・ジェイン)の台頭を導く
進歩層での支持率 5.2(5月)→ 8.4(6月)→ 10.2(7月)→ 19.1%(8月)
■ 文在寅(ムン・ジェイン)理事長の支持率上昇は、5月調査では2.6%、6月調査で4.1%、7月調査で5.6%と着実に上昇し、今回の8月調査では9.0%で孫代表を抜いて2位に浮上した。文在寅(ムン・ジェイン)理事長の支持率上昇は、主に進歩層での支持結集現象と解釈される。進歩層における文在寅(ムン・ジェイン)理事長への支持は、去る5月調査で5.2%だったが、6月8.4%、7月10.2%と着実に上昇し、4ヶ月ぶりに約4倍近い19.1%の支持を受けた。中道層では5月調査で1.8%だったが、8月調査では7.2%に上昇し、保守層では5月2.2%から8月4.4%の水準と、大きな上昇ではなかった。
[図表 8] 全支持層における首位3候補の支持率変化およびイデオロギー性向別文(ムン)候補の支持率変化(%)
全支持層における支持率変化 イデオロギー性向別文(ムン)候補支持率変化
● ハンナラ党候補適格度における朴槿恵(パク・クネ)への集中
ハンナラ党支持層68.3%、保守層の59.1%が7月比上昇
■ ハンナラ党候補適格度調査では、朴槿恵前代表が53.7%で7月に比べ誤差範囲内で上昇した。先月11.7%を得た呉市長は今月調査で6.8%に下がり、10.6%の支持を受けた金文洙知事はもとより、8.1%の支持を受けた鄭夢準(チョン・モンジュン)前代表にも順位を譲った。反面、ハンナラ党支持層と保守層では、むしろ朴槿恵(パク・クネ)氏への集中現象が現れている。7月調査では、朴前代表をハンナラ党大統領候補として適格だと答えた回答は、ハンナラ党支持層では59.0%、保守層では52.8%だったが、8月調査ではハンナラ党支持層で68.3%と9.3%p上昇し、保守層では59.1%と6.9%p上昇した。潜在的な有力挑戦者の一人であった呉世勲市長が住民投票を経て中途で下車したことで、むしろ先行している朴前代表への集中傾向が見られるものと見られる。
● 野党単一候補適格度で孫代表22.6%、文在寅(ムン・ジェイン)16.5%と追撃
■ 反面、野党単一候補適格度調査で、孫鶴圭代表は前月30.2%から8月22.6%へと低下した一方、文在寅(ムン・ジェイン)理事長は前月7.6%から2倍以上上昇した16.5%で、孫鶴圭代表のすぐ後まで迫っているものと見られる。今回の住民投票で、住民投票拒否運動などに対し、野党支持層以外に無党派層や中道層の反感を買ったことで、野党単一候補適格度でも文在寅(ムン・ジェイン)理事長の激しい追撃を受けている状況である。
[表 2] ハンナラ党、野党単一候補適格度(%)
注:文在寅(ムン・ジェイン)理事長は2011年5月より調査に含まれる
他の候補には(金斗官 2.9、魯会燦 2.0、李正姫 0.7、その他 1.9%を含む)
【住民投票後の政局の変数】福祉論争は階級政治を深化させるか?
1. 体感経済の悪化と福祉論争の見通し:拡大論が主流、方法論は選択主義
■ 世論の動向は、次期大統領選挙の核心的な争点となる福祉路線に関する国民世論である。民主党や進歩系政党は、新自由主義的な成長経済から福祉国家への転換を主張する一方、保守陣営はこのような福祉国家をポピュリズムと規定し、成長経済の優位性を主張して対立してきた。しかし最近、従来の二分法的な福祉路線対決構図には少なからず変化が生じている。なぜなら、ハンナラ党内部やハンナラ党の次期有力候補者、さらには最近の保守メディアまでもが、社会的両極化と経済危機が深化する中で福祉に対する前向きな姿勢を示し、温かい市場経済路線への転換を主張しているからである。過去の成長対福祉という二分法から脱し、このような福祉路線上の認識の分化が生じているのは、何よりも韓国社会の福祉水準に対する認識の差に起因する。
● 2008年金融危機以降、成長優先から福祉優先への転換:福祉優先49.8% vs 成長優先41.7%
福祉過剰8.3%、現水準で妥当22.7%、福祉水準を拡大すべき66.8%
■ 「図9」で、成長と分配のどちらをより優先すべきかという問いに対する認識変化の過程を見ると、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府時代に経済危機論が台頭し、成長主義が強化され始めた。この流れは、成長主義を強調した李明博(イ・ミョンバク)大統領の当選につながった。しかし、2008年末の世界金融危機を経て最高潮に達した成長主義は、2010年を経て急速に福祉優先論の方へ重心が移動していく。これは、経済危機後、マクロ指標の改善にもかかわらず、李明博政府と保守陣営が主張してきた成長の波及効果(trickle-down)を体感できなかった反作用と見ることができるだろう。2010年10月の調査では、福祉を優先すべきだという立場が53.4%、成長優先という立場が39.2%と示された。今回の調査では、福祉優先の立場が49.8%、成長優先の立場が41.7%と示され、依然として福祉優先の立場が多数を占めた。しかし、今回の住民投票過程で保守層の結集効果があったのか、その差は縮小する様相だった。
■ 成長と分配の優先順位次元だけでなく、現在の韓国社会の福祉水準に対する認識の差も、福祉に対する態度を分化させる重要な問いである。呉世勲(オ・セフン)市長や伝統的な保守層が、無償給食住民投票に結集した基本的な論理は、普遍的福祉論が福祉の過剰を引き起こし、結果的に増税と国家財政の圧迫につながるという前提から出発する。反対側からは、主にOECD基準で見ても最下位圏に属する福祉支出を根拠に、福祉の過剰はありえないと主張する。国民の考えはどうか。今回の調査結果を見ると、基本的に福祉過剰論よりも福祉欠乏論の立場に立っていることがわかる。「我が国の福祉水準に関する立場」を尋ねた結果、回答者の8.3%は福祉水準を低下させるべきという立場である一方、22.7%は現状水準で妥当だと答え、66.8%は福祉水準を現在より拡大すべきだと答えており、福祉過剰論に共感していないことが示された。
[図9] 分配優先対成長優先路線に対する選好変化(%)
● 経済危機の解決策に関する社会的合意の崩壊
分配優先論が多数の世論だが、経済状態によって成長・分配の立場は分かれる
■ このように福祉拡大に対する世論が圧倒的多数を占めるのは、やはり最近の体感経済の悪化と関連があるものと見られる。韓国経済の状態については、2008年の世界金融危機直後の調査である2009年2月調査で、悪化したという世論が93.1%に達した後、1年経った2009年12月からは好転し、2010年12月調査では好転しているという楽観的な世論が25.8%まで増加し、悪化したという世論も35.9%の水準まで低下した。
■ しかし、今年2月から全世帯難、物価難など民生経済が悪化し、為替レートや金利の不安、原材料価格の不安が重なり、国家経済に対する懸念が大きくなっている。今回の調査では、好転したという世論は12.0%まで減少し、悪化したという世論は6ヶ月前に比べて18.4%ポイント上昇して54.5%にもなった。家計経済の認識を見ると、体感経済の改善の幅は大きくなかったが、2010年12月までは少なくとも家計経済が悪化したという世論が着実に減少した。しかし、やはり今年に入ってから家計経済が悪化したという世論が再び37.8%まで上昇している。
■ 重要なのは、このような経済危機の解決策に関する社会的合意が存在するかどうかという問題である。2005年盧武鉉政府時期に経済危機論が台頭した当時、大多数の国民の間で成長を通じた危機克服という原則に対する社会的合意があり、こうした傾向が成長を強調した李明博候補が当選するのに一役買ったものと見られる。
[図10] 経済認識の変化:国家経済および家計経済(%)
韓国経済の体感度変化 家計経済の体感度変化
● 2005年経済危機時の成長解決策に関する社会的合意
2011年 福祉優先が多数だが、国家経済に関する診断によって成長優先論も拮抗
■ 「図11」を見ると、2005年8月の調査では、国家経済が改善されたと見る回答層が38.5%、現状維持の立場が35.8%、悪化したと見る立場が40.8%であったのに対し、成長を優先すべきだという立場はそれぞれ61.5%、64.2%、58.4%であり、成長を通じた危機克服への合意が存在した。しかし現在は、国家経済の状態に関する診断によって立場の差が顕著になった。国家経済が改善されたと見る層では、分配優先の立場が37.1%であるのに比べ、成長優先という立場が47.4%と多く、分からないという回答が14.5%であった。現状維持の立場を持つ層では、分配優先が49.4%、成長優先が43.8%と拮抗し、国家経済が悪化したと回答した層のうち、逆に54.1%が分配を優先し、39.2%のみが成長が優先だと答えた。
■ 現在、国家経済の体感度が急激に悪化するにつれて、全体的に福祉の縮小よりも拡大を望む世論が多数を占めているが、現政府の経済管理対策の樹立や今後の大統領選挙戦略の観点から、少なくない政治的争点と論争が噴出する導火線を持っている。今後、選挙過程でこうした経済認識の亀裂と福祉路線に関する認識の亀裂が重なる場合、その後の選挙過程で政治社会的な対立様相がさらに激化する可能性があるという点で注目する必要がある。
[図11] 国家経済危機時の解決策:成長か?分配か?(%)
2005年経済危機解決策:成長優位 2011年経済危機解決策:成長/福祉の対立
● 経済危機の相反する解決策:福祉は拡大しつつ、効率的な選択主義を選好
選択的給食論:8月調査51.7%対41.0%、6月調査53.4%対39.1%
■ 呉世勲(オ・セフン)市長は、住民投票の署名および投票過程を通じて、普遍的無償給食論を無償ポピュリズムと規定し、選択的給食論、選択的福祉論を強く推し進めた。全体的に韓国社会で福祉拡大に対する世論が強化されている中で、呉世勲市長がこうした問題を抱えて政治的な冒険を敢行できたのは、福祉拡大論の世論とともに、福祉の方法論においては野党の普遍主義的アプローチの代わりに選択主義的アプローチを選好する世論を考慮したためと見られる。実際に、今年2月からEAIが実施した世論調査の結果を見ると、普遍福祉対選択福祉の立場の中で選択福祉路線の優位性が確認されてきた。
■ 最近では、6月の調査で所得下位50%を対象とした選択的給食論を好む立場が国民全体の53.4%、全生徒対象の全面給食論を支持する世論が39.1%であり、こうした優勢は他の調査結果でも確認される。選挙終了直後に実施された今回の全国調査でも、差はやや縮まったものの、選択的給食論の支持が51.7%、全面給食論(全生徒対象)が41.0%と、依然として優位を保っている。
■ こうした福祉政策の方向性を提供する、より包括的な福祉路線においては、普遍的福祉路線に対する共感度よりも選択的福祉路線に対する共感度がやや増加した。「政府が医療、保育、教育などの福祉サービスを全ての国民に平等に提供すべきだ」という普遍福祉論に共感するという回答は、前月の68.8%から62.7%へと6.2%ポイント減少した一方、「福祉サービスを緊急を要する部門と対象に選択的に提供すべきだ」という選択的福祉論に対する共感度は、87.1%から87.9%へと高い共感度を維持した。去るEAIオピニオンレビュー201107-01号で明らかにしたように、普遍福祉を実施した場合の増税の可能性に対する懸念が大きいからである(チョン・ハヌル「ソウル市民の無償給食認識地形分析と住民投票展望:普遍給食論と選択給食論は和解できないのか」201107-01号)。
[図12] 無償給食案および福祉路線に対する選好変化:選択主義の公固化(%)
無償給食案に対する選好 福祉路線の共感度:普遍福祉対選択福祉
● 福祉拡大/選択的福祉論を先取する側が、今後の福祉論争の主導権を握る
■ 福祉に対する態度(縮小・維持 vs. 拡大)の軸と、福祉路線(普遍 vs. 選択)の軸を交差させると、「福祉拡大/普遍福祉」、「福祉拡大/選択的福祉」、「福祉縮小・維持/普遍福祉」、「福祉縮小・維持/選択的福祉」の4つの類型に分類される。「福祉拡大/普遍福祉」の立場が野党と進歩勢力の立場であり、全体の回答者の36.2%で単一類型としては最も多い割合を占める。これに対立していた呉世勲市長と伝統的な保守層の立場は、「福祉過剰論/選択的福祉」の組み合わせで22.9%であった。一方、呉世勲市長の求愛にもかかわらず距離を置いていた朴槿恵(パク・クネ)前代表や黄祐呂(ファン・ウヨ)ハンナラ党代表のケースは、類型上基本的に福祉拡大の立場でありながらも、選択的福祉論の立場であり、全体の回答者の32.8%を占めている。最後に、福祉を縮小しつつ普遍福祉論を追求する立場であり、論理的な不整合性からこうした立場は8.1%に留まっている。
■ 単一類型だけでは多数派の立場とならない条件で、与野党の福祉論争をどの軸を論争の基本構図とするかによって、多数派連合の主役が変わってくる。呉世勲市長は、当初、福祉方法に関する態度を基本軸とし、選択福祉論対普遍福祉論の構図を作り勝利を図ったものと見られる。しかし、その論理的前提を「福祉ポピュリズム/福祉過剰反対」としたことで、実質的に選択的福祉主義者の中の福祉拡大を好む政治勢力と有権者を離脱させる結果をもたらした。朴前代表やハンナラ党の首都圏議員たちは、基本的に野党の画一的な普遍福祉路線に反対しつつも、福祉態度においては福祉を拡大すべきだという世論(66.8%)を反映しているという点で、伝統的な保守層の福祉路線とは軌を一にしない。ところが、この案が多数派連合を形成するのに有利だったと見られる。
■ ハンナラ党が実際に「福祉縮小/選択的福祉論」の立場にポジションを移動した場合、野党が既存の普遍福祉論を固守する限り、福祉イシューで多数派連合を形成するのは難しい。ハンナラ党がポジションを移動し、与野党間の論争の軸が「福祉拡大/普遍福祉論」と「福祉拡大/選択的福祉論」の構図で形成されれば、伝統的な保守層は福祉態度および福祉方法の二つの次元すべてで対立する野党案よりも、福祉態度次元でのみ対立する「福祉拡大/選択主義」により親和的であるほかないからである。
■ 今後の総選挙、大統領選挙でハンナラ党および保守層内部の福祉論争がどのような選択に帰結するかに応じて、その後の与野党間福祉論争の形勢が大きく変わる可能性があることを意味する。現在の福祉認識類型別の分布を考慮すると、ハンナラ党が従来のように伝統的な福祉縮小/選択的福祉論の立場に立てば、野党が福祉拡大を望む世論を刺激することで、戦える戦いになるだろうが、ハンナラ党が「福祉拡大/選択的福祉論」の立場に立った場合、福祉アジェンダ争いは苦戦を免れない状況と見るべきであろう。
[表3] 福祉認識類型別回答者規模および政治勢力(%)
2. 福祉論争、韓国社会で階級政治を現実化させるか?
■ 福祉イシューに対する世論の二重性(福祉拡大論と選択的福祉路線が共存)を確認することに劣らず注目すべき点は、まさにこうした福祉論争が韓国社会に潜在していた階層/階級政治を活性化する側面があるという点である。
■ 2010年地方選挙で、所得水準の高い江南3区での呉世勲候補に対する圧倒的な支持と、それ以外の江北地域での苦戦を機に、選挙および政治過程における階級/階層投票の可能性に対する関心が高まっている。既に首都圏の洞別単位分析次元では、所得の高い地域ほどハンナラ党の支持および投票率が高く、所得の低い地域で民主党の支持および投票率が低いという、階級投票の観点から分析した研究も出ている(ソン・ナック2010)。
■ しかし、韓国社会で階級投票/階級政治の可能性に大きく注目してこなかったのは、第一に、集合的な「洞」の次元では所得水準の高い洞とそうでない洞との間の投票率および投票集計結果上の差に過ぎず、実際の個人の投票選好を説明する要因としては階級要因が大きくなかったからである。これまで韓国では、客観的な所得指標基準で見ても、あるいは階層認識のような主観的指標基準で見ても、いずれも個人レベルでは階級/階層要因が投票決定要因にならないというのが一般的な説明であった。なぜなら、これまで低所得層あるいは主観的な下位階層で保守傾向のハンナラ党の支持率が高く 나타나、低所得/下位階層=進歩、高所得/上位階層=保守性向という階層政治の特性が韓国では見られなかったからである。
● 福祉認識における階層的認識差が顕著に
上位階層は福祉過剰論 vs. 中間層/下位層では福祉拡大論が優勢
無償給食論争で階層別差が大きい:選択的給食論賛成、上位層62.3%、中間層51.9%、下位層50.2%
■ 最近、各種世論調査で階級/階層別の政治的態度に少なからぬ差が発見されている。これは、客観的な所得基準よりも主観的な階層認識基準で見るとき、階層別の政治社会認識と態度の差がより明確に現れる。特に福祉イシューは、階層/階級間の認識格差が大きく現れる領域である。
■ 「図13」で、韓国社会の福祉水準に対する評価を見ると、自身を中間層、下位層と見る回答者の場合、福祉を拡大すべきという立場がそれぞれ67.7%、70.2%と示されたが、自身を上位層と見る主観的な上位層では52.5%が福祉を現在より縮小するか、現状水準が妥当だと答え、福祉を拡大すべきという立場は47.5%に留まった。
■ また、住民投票の争点に対する認識においても、全体的に所得下位50%を対象とした選択的給食案の選好が62.3%、全生徒対象の普遍福祉論支持が29.5%に過ぎなかったが、自身を中間層と見る層では選択的給食案の支持が51.9%、普遍給食案の支持が40.7%と示された。一方、主観的な下位層では選択的給食論の支持が50.2%、普遍給食案の支持が43.2%であった。階層が上位に行くほど選択的給食論を、下位層に行くほど普遍給食を好む立場が相対的に多くなっていることが確認される。
[図13] 階層別福祉態度と給食案に対する選好差(%)
階層別福祉態度:「福祉拡大優勢」 階層別給食案:「選択路線優勢」
● 福祉論争 - 階級政治につながるか?
■ こうした政策的態度だけでなく、政党支持においても階層/階級政治の可能性がうかがえる。2005年盧武鉉政府時期の階層別政党支持パターンを見ると、明確な階級/階層政治のパターンを見るのは難しい。ハンナラ党の支持率を見ると、上位層で27.8%、中間層で27.2%、下位層で24.4%と大きな差はなかった。開かれたウリ党(ヨルリン・ウリ党)の場合、上位層で8.3%の支持に留まったが、中間層で19.3%、下位層では15.4%と、いずれもハンナラ党に後れを取っている。上位層では開かれたウリ党に対する拒否感が強いため、部分的に階層的な特性が現れているが、与党と野党の間に階層的な亀裂があるというよりは、この時期、開かれたウリ党が主に中間層から相対的に高い支持を受けている点が注目に値する。ただし、上位層=ハンナラ党、下位層=民主党支持のような階層的亀裂は明確ではなかった。
■ しかし、今回の調査結果を見ると、少なくとも現執権党であるハンナラ党に対する政党支持は、明確な階層/階級間の差を示している。ハンナラ党の支持率を見ると、上位層では47.5%、中間層で39.5%、下位層で31.5%と、上位層であるほど保守的な性向のハンナラ党を支持し、下位層であるほどハンナラ党の支持が弱まる傾向が見られる。一方、民主党に対する態度では、階層的な差は見られなかった。ハンナラ党の場合、いわゆる法人税引き下げ、総合不動産税緩和など、特定の階層を狙った階級/階層政策を継続的に推進しているのに対し、民主党は一般的な福祉政策の拡大以外に、ターゲットを絞った階級/階層政策を提示できなかった側面が反映されたものと見られる。結果的に、現在の政党の亀裂を階級政党体制への再編と語るには時期尚早と言えるが、今後の各政党の政策ポジショニングと階級政策の方向によって、階層/階級政治が現在よりもさらに強化される可能性を排除することはできないであろう。
■ 先述の福祉イシューで、ハンナラ党が福祉ポピュリズム反対という従来の立場を固守し、野党が福祉拡大を争点化する場合、ハンナラ党は上位層の支持をさらに固める一方、民主党は中間層と下位層の支持を拡大する方向で支持層の変化が生じるだろう。一方、現在の福祉争点である選択的福祉論と普遍福祉論の争点を中心に与野党の対決が進む場合、選択的福祉論を好む上位層と中間層はハンナラ党の支持基盤となり、普遍福祉論の比重が相対的に高い下位層では民主党の支持が拡大されうることを示唆している。
[図14] 階層別政党支持パターンの変化(%)
2005年盧武鉉政府:経済危機 2011年李明博政府:経済危機
■ 各階層が好む政策間の距離が大きくなり(政策差別性が増し)、政党間の政策ポジションの差が際立つほど、与野党間の政治的亀裂を分ける基準として階層/階級変数が重要になると予想される。しかし、ハンナラ党の場合、次期総選挙、大統領選挙を念頭に置き、多数の中間層が好む福祉の拡大および選択主義を強化することによって、主に上位層+中間層連合で支持層を拡大することに注力するものと見られる。民主党も中間層を自身の核心支持基盤とすれば、両党ともに包括的な階層政策を提示することになり、階級/階層政治の性格は弱まると予想される。しかし、民主党が昨年の地方選挙以降見せたように左傾左進の進歩路線を固守し、階層政策を強化する場合、韓国社会で階層的亀裂も政治行動を説明する主要変数として浮上する可能性が存在し、これに対して注視する必要があるだろう。特に福祉アジェンダを巡る階層間の認識格差が大きくなっている状況ではなおさらである。
【大統領支持率】効果のなかった8.15共生発展論
平昌効果が消えたMB支持率、30%台に下落
MB支持率、30%台に下落:35.9%(4月)→39.3%(6月)→43.1%(7月)→ 39.6%
■ 今年3月までは40%台半ばを行き来していた大統領支持率は、4.27補欠選挙で野党に敗北して以来、30%台に落ちたが、先月7月の調査では平昌オリンピック誘致成功など対外的な業績を通じて再び43.1%まで上昇した。過去の政権4年間、李明博(イ・ミョンバク)政府は、政治的な主導権を行使しにくい状況で、8.15(光復節)の祝辞を起点に国政基調を再整備し、国政支持率を引き上げるパターンを見せてきた。2009年の「中道実用路線」、2010年の「親庶民公正社会論」は、広範な中間層の支持を確保することに成功し、毎年国政支持率を10%ポイントほど引き上げることに成功した。
[図15] 年次別国政支持率変化(%)
共生発展論、効果を得られるか?
■ 2011年、政権4年目を迎えた今年の8.15(光復節)祝辞では「共生発展論」を提示した。しかし、従来の「中道実用路線」や「親庶民政策路線」、「公正社会論」など、主要な国政アジェンダに対する広範な支持を導き出したものとは異なり、今年の共生発展論に対する世論の反応は鈍い。主な要因としては、第一に、住民投票に注目が集まったため、相対的に共生発展論への注目度が低かったこと、そして先月の支持率上昇の主な要因であった平昌オリンピック誘致効果が消滅したことが最も直接的な要因と見られる。第二に、国政評価の主な要因の一つである経済実績(economic performance)の悪化が作用しているものと見られる。第三に、これまで政府が推進してきた中道実用路線、親庶民公正社会論が短期的に支持率を上昇させることに成功したが、国民が体感できる変化を生み出すことには失敗し、真摯さへの疑問と実効性への懐疑も作用しているものと見られる。最後に、急速に次期総選挙、大統領選挙体制への移行が行われ、現職大統領へのレームダック現象が本格化している状況も作用したと推測される。
*この本文は韓国語で書かれた原文を AI で翻訳したものです。一部の翻訳やニュアンスに誤りがある場合があります。