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[米中核大妥協スペシャルレポート] ⑤核テロ防止のための核安全保障構想:米中核安全保障及び安全協力戦略

カテゴリー
特別報告
発行日
2023年8月22日
関連プロジェクト
米中核競争と東アジア安全保障秩序

編集者ノート

キム・ヤンギュEAI主任研究員とイ・ジョンソク・テジェ大学教授は、核兵器関連の核物質・技術・装備に対する強力な国際・国家レベルの監視及び取り締まりが行われているため、核兵器テロはその成功可能性が非常に低いものの、「ダーティボム」などを活用した放射能テロや原子力発電所を破壊することによる「大量混乱兵器(weapons of mass disruption)」の使用試みは現存する脅威であると指摘します。しかし、核テロ分野の協力は米中戦略競争全般の影響を強く受けており、現在の米中安全保障戦略は互いに多くの同盟国を獲得するための競争につながっており、テロ問題と人権問題が結合する様相を呈しているため、今後の核テロ問題を巡る米中協力の可能性は低いと分析します。したがって、米中が競争と緊張を緩和し、局面変化を試みるための触媒役となりうる議題として核テロ問題を設定するためには、核テロ問題において原発施設への脅威のような共同利益の領域は最大化し、新疆ウイグル自治区の人権問題とテロ問題が連動するような対立の領域は最小化する方式で戦略的かつ慎重に議題を設定すべきだと提言します。

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I. 核テロ分野の現状分析

(1) 核テロ分野における国際協力の弱体化の背景

2001年9月11日の米国に対するアルカイダ(Al Qaeda)のテロ攻撃は、1991年のソ連崩壊以降の地球化の深化と民主主義の拡散に伴う世界平和及び繁栄に対する国際社会の楽観論を打ち砕く契機となりました。その後、米ブッシュ政権が開始した「テロとの戦い(Global War on Terrorism)」に続き、オバマ政権期には「核安全保障サミット(Nuclear Security Summit)」などを通じて、核兵器のような大量破壊兵器(Weapons of Mass Destruction)がテロ分子の手に渡らないように阻止するための様々な国際協力の努力が「核安全保障(nuclear security)」の名の下に進められました。

しかし、2016年の最後の核安全保障サミットを最後に、核テロ防止のための国際社会の協力策に対する関心は次第に弱まり、トランプ政権が「米国第一主義(America First)」と対中牽制政策を強化するにつれて、国際社会の共同問題解決のための多国間または二国間協力策に関する議論は大きく減少しました。特に、2022年のロシア・ウクライナ戦争以降、国家間の対立様相が権威主義政府対民主主義陣営間の対立として認識されるようになり、核テロ及び拡散防止のために国際協力と連帯が大きく弱まる状況です。北朝鮮のミサイル発射実験に対する対北追加制裁案が2022年5月に国連安全保障理事会でロシアと中国の反対により通過せず、続いて2023年2月には議長声明の採択も無に帰しました。2022年8月に開催された第10回核兵器不拡散条約(Nuclear Nonproliferation Treaty: NPT)評価会議も、ザポリージャ原発への言及を問題視したロシアにより最終宣言文の採択に失敗しました。

このように、トランプ政権とウクライナ戦争が核問題に関する国際社会の協力弱体化をもたらした主要因となったことは明らかですが、核テロ分野の国際協力の動因が失われた背景には、逆説的に過去20年間にわたる米国の対テロ戦が成功した側面も無視できません。もちろん、まだIS(Islamic State)とアルカイダが残存しており、これらが米国に対して大量破壊テロ攻撃を敢行しようとする意志は全く弱まっていません。さらに、イデオロギー(ideology)の次元で米国の対テロ戦は大きく成功を収められず、テロ集団が心理戦を成功的に遂行し、持続的なテロ組織員の補充が行われているのも事実です。これにより、中東、北アフリカ、西アジアでは依然として消耗戦(war of attrition)の様相を呈することもあります。

しかし、テロ勢力を特定して組織の指導者を排除し、米国市民の安全を脅かす可能性のあるテロ組織の能力を弱体化させようとした米国の対テロ戦は、相当な物理的成功を収めました。米国は第1、第2代アルカイダの指導者を殺害し、テロ組織が大規模作戦を遂行する能力を持てないようにしました。現在、テロ集団の組織員は水平的に広く拡散し、SNSを通じて活動していますが、米国政府の積極的な努力によりその活動は極度に萎縮しました。ドローンを活用した空中殺傷作戦を「モグラ叩き(whack-a-mole)」と非難する声もありましたが、経験豊富なテロ組織員がテロ試みをすることよりも自身の生存に専念させるようにしたという点で十分な成果を収めたと評価できます(House Hearing 2017)。

想定されるテロ脅威の中で最も恐ろしいシナリオに該当する核テロは、核爆発を通じて目標とした国家に最大の人的被害をもたらすと同時に、心理的・政治的に甚大な圧迫効果を狙う方式の攻撃です。2009年に出版されたある研究は、テロ集団が2千万ドルをかければ初歩的なレベルの核装置を開発するのに必要な装備・人材・物質を入手でき、さらに8千万ドルをかければ高濃縮ウラン、プルトニウムなど兵器化可能なレベルの核物質の入手が可能だと主張しました(Finlay and Tamsett 2009)。知られている事例としては、1990年代の日本のカルト教団オウム真理教と2000年代のアルカイダの核兵器入手試みがあり、2010年代にはISが核兵器開発を試みたことが知られています。

しかし、核テロの歴史は非常に簡単に要約されます。「一度も発生しなかった(There hasn’t been any)」 (Jenkins 2008)。核兵器に関連する核物質・技術・装備・兵器については、強力な国際・国家レベルの監視及び取り締まりが行われており、核兵器テロはその成功可能性が非常に稀です。米国の対テロ戦遂行の成功によりテロ試み自体が困難になった現状において、核物質を入手してテロを敢行することはさらに困難になりました。

現在、テロ集団は核兵器開発知識、核物質、施設、資金といった必要条件のうち、いずれ一つも容易に確保できない状況です。核物質入手及び輸送関連技術及び人材の確保、核物質の安全な保管及び再処理・加工、起爆装置の設計及び開発、兵器化後の隠匿及び輸送全過程における徹底したセキュリティ維持など、成功的な核兵器テロのためには最低20段階以上の課題が要求されますが、テロ集団がこれらの全ての課題を秘密裏に成功させることは不可能に近い(Mueller 2012)。その中でも可能性のあるシナリオは、核保有国から核開発支援を受けるか、直接核兵器を得ることですが、いくら不良国家であっても自国が直接管理できないテロ集団に核兵器や技術を提供する誘因動機はありません(Mueller 2009)。まともなセキュリティ対象とならないいわゆる「緩い核(loose nukes)」の奪取や闇市場での入手懸念も過大評価されており、ソ連崩壊直後の混乱期でさえ核兵器だけは徹底したセキュリティと管理の対象であったことを記憶すべきです(Mueller 2012)。

一例として、核兵器ではありませんが、生物化学兵器を活用したテロを敢行したオウム真理教は、科学者、研究施設、無制限に近い研究資金を確保したにもかかわらず、東京地下鉄で7名の死亡被害者を出すにとどまりました。火を放ったり銃を使用したりするテロの方がはるかに効果的だったでしょう。仮に核兵器の入手に成功したとしても、実際の核攻撃を試みる可能性は著しく低いという点も考慮すべきです。テロ集団が開発可能なレベルの核兵器では、通常兵器以上の殺傷力を持つことは難しく、核攻撃を試みた場合、被害国と国際社会が当該テロ集団を徹底的に壊滅させるレベルで報復に出るため、核兵器は他のテロ方法に比べて決して魅力的な選択肢ではありません(McIntosh and Storey 2018)。このため、テロ組織が核兵器を入手してテロを敢行することは実現性が非常に低くなっており、したがって核テロの恐怖は「神話の中の怪物」のようだと見る立場が主流の学者たちの見解です(Jenkins 2008)。

米国国土安全保障省とメリーランド大学が共同で構築したPOICN(Profiles of Incidents Involving CBRN and Non-state Actors)データベース(Binder and Ackerman 2021)は、こうした主張を裏付ける具体的な数値を提示しています。1990年から2017年までの期間、全世界で発生あるいは阻止された非国家犯罪・テロ集団による大量破壊兵器(生物・化学・毒・放射能・核兵器)テロ及び関連犯罪(危険物質奪取、密輸など)計517件のうち、55件(10.64%)が放射能物質、16件(3.09%)が核兵器に関連するものであり、これらはすべて未遂に終わるか、摘発・阻止されました。1名以上の死傷者を出したのは計94件(18.18%)でしたが、調査期間中に発生した総負傷者数(5,662名)の75.86%が単11件のテロ攻撃により発生しており、これらはすべて毒物や化学物質を利用したテロでした。最も大きな被害を出したのは2016年、イラク北部の小都市タザ(Taza)に対するISの化学兵器攻撃で、計1,308名の被害者が出ました。以上のデータは、国家行為者に比べて人的・費用・物的な制約が著しいテロ集団が、核兵器テロよりも生物化学テロをはるかに好むこと、そしてこのような方式のテロが核テロよりも実質的に成功する確率もより高いことをよく示しています。

(2) 現在の核テロ脅威評価

では、もう核テロは心配する必要のない問題なのでしょうか?米国政府が現在の水準でテロ集団に持続的な圧力をかけ、核物質防護に対する国際協力が続く限り、今後も核テロの脅威はそれほど大きくはないように見えます。

しかし、アリソン(Graham Allison)をはじめとする多くの研究が指摘するように、核物質及び核兵器の拡散と移転による核テロの可能性は依然として無視できる水準ではありません(Allison 2018; Dalton 2021)。これまで核兵器テロがなかった理由は、核兵器テロ自体の可能性が低かったからではなく、国際社会と各国が核兵器テロの脅威を深刻に認識し、それを防止するために導入した様々な措置が効果を発揮した結果と言えます。特に、ロシアの核兵器安全のための米露協力、そしてオバマ政権期の地球規模の核安全保障レジーム強化の努力が重要な成果を収めました(Allison 2018)。また、9.11テロや多数の自爆テロの事例が示すように、テロ集団は最大限の政治的効果を得るために、自己組織に被害が予想されても核攻撃に踏み切る可能性があるという点も念頭に置くべきです(Bell 2019)。核弾頭の小型化及び核発射装置のデジタル化により、核テロに使用されやすい基盤技術が増加したのも事実です。

さらに、核テロは単に核兵器を使用したテロだけを指すものではありません。主要な学者や専門家(Galatas 2020; Gale and Armitage 2018)は、核兵器テロよりも放射能テロの危険性をより深刻に認識しています。まず、放射能テロは核爆発ではなく放射能汚染を通じて実質的な被害と経済・社会的な混乱を引き起こす方式で、大きく4つの類型に分けられます。第一は、通常爆発装置を活用して放射能を拡散するいわゆる「ダーティボム(dirty bomb)」の使用であり、第二は、空気・水道・土壌に放射能物質を秘密裏に直接拡散して汚染させることです。第三の類型は、放射能拡散装置(Radiological Emission Device: RED)を大衆利用施設などに秘密裏に設置して放射能汚染を誘導する方式であり、第四は、原子力発電所(以下、原発)、原子力発電廃棄物貯蔵庫、病院の放射線施設など、放射能物質の取り扱い・貯蔵施設を攻撃して放射能汚染を企てる方式です。放射能テロは、核兵器開発に必要な複雑な技術と兵器化が可能なレベルの高濃縮核物質へのアクセスを必要とせず、比較的少ない費用とリスクで済むため、テロ集団にとって魅力的な手段となり得ます。

したがって、「核兵器による(weaponized)」テロ脅威がほぼ消滅したからといって、「ダーティボム」などを活用した放射能テロのように「即席の装置(improvised)」による脅威が消滅したと見ることは困難です。また、原子力発電所を破壊することによる「大量混乱兵器(weapons of mass disruption)」の使用試みの脅威も、現存する脅威であることは明らかです。特に、米中核競争が持続し、このような「垂直拡散(vertical proliferation)」が「水平拡散(horizontal proliferation)」につながる場合、深刻な経済難に苦しむ北朝鮮による「核兵器移転」の脅威と、インド・パキスタン国境地域で小型戦術核兵器が盗難される「流出」の脅威は、今後さらに増大する可能性があります(Allison 2018)。

2. 米中核テロ戦略及び今後の挑戦要因

(1) 概要

中東のテロ事態と米国の В Afghanistan撤退後、テロの根拠地はアフリカへと移動する傾向を見せており、この地域に対する米国の対テロ努力は継続されています。中国の場合、 В Afghanistanの過激主義拡散に対して安全保障上の懸念を持っています。中国はタリバンとの緊密な関係を活用して経済協力を拡大しようとする努力を試みることもありますが、中国の核心的利益は新疆ウイグル自治区の解放及びイスラム国家建設を通じて西側との競争を追求するウイグル武装勢力に関する安全保障上の利益を含みます。このような点で、依然として米中間には対テロ協力の必要性が継続すると言えます。また、先に指摘したように、(1)放射能テロ、(2)北朝鮮による核兵器移転、(3)インド、パキスタン国境地域でのテロ組織への核兵器流出の脅威が継続しているにもかかわらず、中国及びロシアなどの地政学的競争国と米国との関係の力学の中で、核テロ分野の協力が国際社会で周辺的な課題にとどまることは決して望ましい現象ではありません。したがって、核テロ問題に関する米国と中国の現在の立場を整理し、両国の協力を阻害しうる脅威要因を把握して、米中協力を強化できる方策を検討する必要があります。

(2) 米国

2009年4月のプラハ演説で、オバマ大統領はテロ組織が核兵器を購入したり、製造したり、盗んだりしようとする強い意志を持っており、もしテロリストの手に核兵器が入れば、躊躇なく使用するだろうと強調しました。このような認識は、核テロ攻撃が「もし(if)」起こる場合にどう備えるかを議論するのではなく、「いつ(when)」起こるかを研究する緊迫した雰囲気を作り出し、その後2010年から2016年まで4回の核安全保障サミットを通じて、核兵器製造あるいは放射能爆弾(Radiological Dispersal Device: RDD)製造に使用されうる核物質(fissile material)がテロリストの手に渡る全ての経路、すなわち核保有国からテロ組織への「移転(transfer)」、盗難される「流出(leakage)」、あるいはテロ組織による「独自生産(indigenous production)」を遮断する様々な協力策が議論されました(Litwak 2016)。

しかし、トランプ政権を経て、核安全保障強化のための様々な国際協力努力にブレーキがかかりました。米国国内の社会的分断の深化、政府主要ポストにおける専門家の不在及び空席期間の長期化、米国の政党の二極化の深化(Nuclear Threat Initiative 2018, 14)により、核安全保障分野における米国の成果は相当後退しました。このような米国リーダーシップの弱体化により、54カ国で核物質の流出及び核施設の破壊に対する脅威がいずれも増加したとされています。2021年に発足したバイデン政権は、この問題を克服するための努力を 꾸준히 기울였습니다。2021年のミュンヘン安全保障会議での演説を通じて核物質防護に対する国際協力の回復を強調し(Roth 2022)、2023年3月に公開した「大量破壊兵器テロ防止及び核・放射能物質安全保障強化国家安全保障覚書(National Security Memorandum to Counter Weapons of Mass Destruction Terrorism and Advance Nuclear and Radioactive Material Security)」 (The White House 2023a)を通じて、核安全保障分野における米国の努力と国際社会における米国のリーダーシップを回復しようと努めています。

(3) 中国

中国はテロ問題を国家安全保障の「根本的課題」である政治安全の問題と捉えています。<新時代中国国防>(State Council Information Office 2019b)報告によれば、中国は2012年から人民武装警察部隊(People’s Armed Police: PAP)を動員して作戦遂行を行っており、2015年には対テロ法を採択し、国家がテロ組織に対応する場合、インターネット及び通信事業者が積極的に協力することを義務付けました。国際協力の次元では、対テロ戦を「人類共栄」と「ウィンウィン協力」の次元での主要課題と規定していますが、実質的な共同対応は上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization: SCO)及び В Afghanistan、中国、パキスタン、タジキスタンで構成される4者協力調整メカニズム(Quadrilateral Cooperation and Coordination Mechanism: QCCM)を中心に 이루어지고 있습니다。特にロシアとは高度な対テロ戦合同訓練を実施しています。

(4) 今後の挑戦要因

今後、米中が核テロ分野における協力強化を推進しようとする際に考慮すべき最も大きな脅威要因を整理すると、以下の3つが挙げられます。

課題1. ウクライナ戦争後の核不拡散国際ガバナンスの弱体化と核安全保障の脆弱性増大

アリソンは、(1)数度にわたり米国のレッドラインに挑戦した北朝鮮に対し、いかなる措置もまともに取れていない点、(2)技術と科学の発展により核開発ノウハウの移転がより容易になった点、(3)米国の対テロ戦遂行に伴う反発感が持続的に新たな抵抗勢力を生み出している点、(4)カシミール地域を巡るインド・パキスタン間の領土紛争と国境地帯への戦術核兵器配備に伴う核物質防護の脆弱性増大の可能性、(5)米露間の協力低下に伴う反核テロ努力の効果性の急減、(6)米中核競争の深化に伴う核流出可能性の増大、(7)国際不拡散体制の信頼性弱体化などの要因を挙げて、核テロの可能性が依然として高いと主張しています(Allison 2018, 11-16)。

この中でも特に、ウクライナ戦争後の核不拡散領域における米露協力の断絶は、国際対テロ能力の観点から重大な問題を引き起こしています。先に言及したように、国連安全保障理事会及びNPTレジームの弱体化は、核物質及び技術の移転防止のための核心的対応措置である「処罰による抑止(deterrence by punishment)」能力を大きく低下させ、これは短期的には国家から非国家行為者への連鎖的な違法核拡散を引き起こす可能性を高めます(Litwak 2016)。特に、すでに相当なレベルの核能力を保有している北朝鮮とパキスタンから、テロ組織への核技術あるいは物質が拡散する危険性が高まる可能性があります。一例として、2007年のイスラエルによる空爆で破壊されたシリアのアル・キバール地域で建設中だった原子炉は、北朝鮮の支援を受けたものと知られています(Allison 2018)。さらに、新型コロナ19パンデミック状況下の国境閉鎖と長期間維持されている国際制裁による深刻な経済難の中で、北朝鮮は核、生物化学及びミサイル技術と兵器をイラン、エジプト、イエメン、シリアなどに販売して危機を克服しようとする誘惑を強く受けています(Dalton 2021)。米中間の核競争、特に中国の急速な核能力強化は、ウクライナ戦争後に弱まっている核不拡散ガバナンスにさらなる負担をかけています。このような核不拡散領域における米露、米中間の協力低下と不拡散国際ガバナンスの弱体化は、9.11テロ以降これまで比較的成功的に維持されてきた「核移転」領域における処罰による抑止力と、「核流出」領域における「拒否による抑止力(deterrence by denial)」を同時に弱体化させることで、核テロの可能性を大きく高める可能性があります。

課題2. В Afghanistanとアフリカにおける相反する政策追求

米国は В Afghanistan撤退後、タリバン政権の強化及びタリバン政権によるテロ集団の庇護・支援を警戒しています。一方、中国は В Afghanistanに拠点を置くISIS-Kに合流した東トルキスタンイスラム運動(Eastern Turkistan Islamic Movement: ETIM)とウイグル人及び中央アジア戦士の脅威を防ぎつつ、地域全体に影響力を拡大することを望んでいます。タリバンはETIMと連携しているとされるウイグル人を中国国境に近いバダフシャン地方から В Afghanistan中部地方へ移住させることで、中国の懸念に対応したと伝えられています。このような米中の政策は、対テロ協力を阻害する相反する政策方向と言えます。

現在、アフリカ大陸は多様なテロ脅威に直面しており、米国はアフリカを対テロ支援のための重要な舞台と位置づけています。一方、中国はアフリカを一帯一路イニシアチブの核心地域とみなし、経済交流の強化及び政治的影響力の拡大、そしてそのために権威主義政権の支援などを重要な政策としています。米国はケニアやソマリアのような国々でテロ攻撃に対応し、刑事訴追に使用する証拠を収集するために法執行機関を訓練させている一方、モロッコ、セネガル及びその他の国々では米国が空港の安全強化のための訓練と装備を提供しています。米国はテロの前線国家が自らを守れるように支援政策を推進しています。一方、米国は中国の一帯一路政策が負債の罠を作り、中国に依存的な関係を強化するものだと考えています。このような状況下で、アフリカの権威主義政権、あるいは脆弱な政権が効率的にテロ集団に対応するための努力を傾ける過程で、米中両国と協力的な政策を取る可能性は弱まる可能性があります。

課題3. 対テロ問題と人権問題の連動

中国国内の対テロ戦に関するほとんどの議論は、現在、新疆ウイグル自治区の分離主義者への対応のみを意味する言葉となっています(Tanner and Bellacqua 2016)。これにより、テロ問題は中国国家安全保障上の核心的利益(core interest)の一つと見なされるようになり、監視カメラ、生体情報などのデータ活用を伴う大規模な作戦と、集団収容所、強制労働、洗脳教育、拷問など、反人権的な措置を遂行する様相へと発展しています(Byman and Saber 2019)。「テロ及び過激主義との戦いと新疆ウイグル自治区における人権保護」白書は、2014年以降、中国が新疆ウイグル自治区で1,588のテロ組織と12,995人の組織員を検挙、2,052個の爆発物を除去し、30,645人のテロ組織員を処罰したと強調していますが(State Council Information Office 2019a)、国連はこれを「曖昧で明確でない概念」を動員して拷問、拘禁、宗教及び表現の自由の抑圧を強行する深刻な人権侵害行為と規定しています(OHCHR 2022)。テロ問題を規定する概念でさえ米中が合意できない場合、核テロ問題における米中協力も成果を収めることは困難です。

3. 米中協力のための具体的な実行方策

(1) 見通しと課題

核テロ問題は、米中が協力できる代表的な事案とされてきました。特に、核テロ脅威に対応するためにオバマ政権期に注力した核安全保障問題の解決努力において、中国はかなり協力的な姿勢を見せました。米国ワシントンに所在する非営利団体である核脅威イニシアチブ(Nuclear Threat Initiative: NTI)研究所は、2012年の核安全保障サミット開催以降、2年ごとに核物質または核施設を保有する全ての国々に対し、「核物質の流出または盗難(Theft)」の側面と、「核施設に対する破壊を防ぐ防御(Sabotage: Protect Facilities)」の側面から、各国の成果を評価する『NTI核安全保障指数(Nuclear Security Index)報告書』を発行してきました。この報告書は2020年を最後に発行されていませんが、核安全保障に対する各国の努力を評価できる最も公信力のある指標を提示しています。

[表1]と[表2]で見るように、2020年報告書で中国は、核物質防護の側面では65点で14位(比較:フランス69点で12位、ロシア57点で16位)、核施設防御の側面では74点で22位(比較:韓国77点18位、ロシア64点で30位)に上がり、まずまずの成績を示しています。特に、核物質の盗難防止努力の部分では、日本に次いで最も多くの成果を上げた国(2012年52点から2019年71点に上昇)でもあります。中国は核安全保障サミットが開催される間、法規、管理、モニタリング、緊急措置などで非常に高い透明性を示し、国際規範基準を満たし、「責任ある行動をとる大国であるという自己認識と自負心を長期間保有(long-standing self-perception as the most responsible of the major nuclear powers)」する姿勢を見せました(Kutchesfahani 2019)。

表1 核物質防護順位(2020) 表2 核施設防御順位(2020)

このため、オバマ政権期には核安全保障分野で米中協力が緊密に進められ、2016年には米中が共同で北京に国家核安全保障技術センター(国家核安保技術中心, State Nuclear Security Technology Center)を設立するまでに発展しました。トランプ政権が終了を通告する前の2009年から2020年まで、米中の間で維持された1.5トラック核対話(U.S.–China Track 1.5 Nuclear Dialogue)でも、核テロ防止、不拡散、平和的な原子力エネルギー利用は常に米中間の代表的な協力案件として議論されました(Roberts et al. 2020)。

実際に、原子力発電所防護、大量混乱兵器、ISへの牽制、国内自生テロ組織への対応など、米中の利益が重なる部分も少なくなく、輸出管理、技術習得防止、核分裂物質管理、盗難防止など、両国が協力しなければ成果を上げられない事案も多くあります。特に、ウクライナ戦争を通じて原発への破壊試みがテロ組織ではなく国家軍隊の意図的な攻撃によって発生する可能性が非常に現実的な脅威として浮上し、北朝鮮が高度化する核能力に比べて核施設に対する十分な安全措置を講じていないことにより、核安全保障及び安全(nuclear safety)問題において米中が協力しなければならない理由はさらに多くなりました。

それにもかかわらず、現在の局面が続く場合、短期間で米中が核テロ防止のために協力する可能性は低い方です。その理由は、第一に、核テロ分野の協力は米中戦略競争全般の影響を強く受けます。トランプ政権によって2020年に中断されて以来、1.5トラック対話はまだ再開されていません。新技術、サプライチェーン分野で米国の攻勢的な対中牽制政策の基調が続く場合、現存秩序の守護に対する中国の期待値はさらに低下し、これは米中が核テロ問題を含む多様なイシュー領域で互いに協力することを困難にします。「ディカップリング(Decoupling)」から「デリスキング(De-risking)」へとややトーンダウンした米国の対中政策基調(The White House 2023b)と、6月18日のブリンケン国務長官と秦剛外交部長の会談を機に米中ハイレベル対話が再開され、多少の和解ムードが醸成されましたが、再び6月22日のバイデン大統領の「習近平のような独裁者(dictator)」発言により両国関係が急速に冷え込んだように、現在の競争と対立局面は容易に解消されにくい状況です。

第二に、類似した文脈で、統合抑止(integrated deterrence)とインテリジェント戦(智能化戰)の概念に基づき統合能力構築に集中している現在の米中安全保障戦略は、互いに多くの同盟国を獲得するための競争につながっています。対テロ戦の問題も、中国はSCOや権威主義国家との連携を通じて、米国はインド太平洋地域と欧州内の同類国家(like-minded countries)との協力を通じて対応しており、米中競争が深化する様相を呈しています。前述のように、ウクライナ戦争を契機に民主主義対権威主義の対立様相はさらに深化する局面に至っています。したがって、現在の趨勢が続く限り、核安全保障あるいは安全問題における協力も、陣営論理の影響を受ける可能性が高くなります。

第三に、最近米中政府が明らかにしている立場を見ると、両国が規定するテロの概念自体が異なってきており、特に中国が新疆ウイグル自治区の分離主義者をテロ分子と同一視することに対し、米国をはじめとする西側諸国は人権弾圧と規定している状況です。これは米中両国が今後、対テロ戦の名の下に協力をすることが困難になる要因となります。核物質の防護や核施設の安全ではなく、反テロの名の下に米中が協力を議論する場合、実質的な成果を上げるよりも誰がテロ組織であるかを巡って論争を繰り広げなければならない状況に直面するでしょう。これは米中が協力策を見つける上で、長期的に相当な負担要因となるでしょう。

(2) 米中両国の政策方向への提言と韓国の役割

先に議論した事項を総合的に考慮すると、テロ問題に対する一致しない認識を持つ米中が共同対応を通じて大妥協を引き出すことは非常に困難な状況であり、現在の水準の両国の硬直した関係水準を考慮すると、核テロ分野においても米中協力が短期間内に回復することは容易ではありません。しかし、核安全保障と安全問題において両国間に強い共同利益が存在することは明白な事実であり、これは去る5月10日、東アジア研究所(East Asia Institute: EAI)がハーバード・ベルファーセンター(Belfer Center)、北京大学及び国観(国観)研究所と共に実施した韓米中非公開ラウンドテーブル会議でも確認されました。

したがって、本報告書は、米中戦略競争が緩和されれば初めて核安全保障分野における米中協力も回復されるという観点よりも、米中が競争と緊張を緩和し、局面変化を試みるための触媒役となりうる議題として核テロ問題を提示しようとするものです。このような目的を達成するためには、核テロ問題において共同利益の領域は最大化し、対立の領域は最小化する方式で、戦略的かつ慎重な議題設定が必要です。韓国は国際社会と連帯し、米中が協力できる方向への流れを強化する方式で、米中妥協の道筋を整えることに貢献できます。特に、北朝鮮問題の当事国として、朝鮮半島問題と核安全保障・安全が連動する議論において、韓国が果たさなければならない役割があります。

共同利益の最大化:新たな核安全保障問題と深化する核安全問題への対応

米中が互いに協力しなければならない共同利益領域の中で、最も喫緊の課題の一つが原発に対する国家軍隊の攻撃脅威です。ウクライナ戦争が進行する中で、ロシアはザポリージャ原発地域に対し砲撃攻撃を敢行し、占領作戦を遂行することで非常に危険な前例を残しました。しかし、既存の核安全保障協力はすべてテロ組織による原発破壊試みなどを想定して議論を進めており、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency: IAEA)の「核物質の物理的防護に関する条約(Convention on the Physical Protection of Nuclear Material)」が核物質に対する違法な密輸や原子力施設の破壊行為を法的に禁止していますが、当該条約は原子力施設に対する国家行為者の攻撃や脅威は全く扱っていません(Rodriguez and Sukin 2022)。

2023年5月現在、全世界で稼働中の原子力発電所410基のうち、93基が米国(世界1位)、57基が中国(2位)にあります(World Nuclear Industry Status Report, n.d.)。現在、原発保有1位国である米国や3位のフランスが1基の原発を新規建設しているにとどまるのに比べ、2位の中国は23基もの新規建設を推進しており、これは現在全世界で建設されている原発計58基の半分に達する水準です。したがって、国家が戦争遂行過程で意図的に敵国の原発を破壊して軍事的目的を達成しようとする場合、これは核兵器使用に準ずる甚大な被害をもたらす可能性がありますが、この脅威に最も深刻に晒されている国家が米国と中国です。したがって、国家軍隊による原発攻撃を法的に禁止する条約を採択し、それを履行するための具体的な努力を進めることは、米中両国の国益にとって非常に重要な問題です。

第二に、東アジア地域で深化する核拡散脅威とそれに伴う核安全保障・安全問題の深化への対応です。現在、中国が急速に核弾頭保有数を拡大し、現在の400基余りから2030年までに1,000基まで確保しようとしていること(Department of Defense 2022, 97)は、米中両者の直接的な問題であり交渉は容易ではありません。しかし、このような米中間の垂直的核拡散(vertical proliferation)問題と共に、東アジアで進行中の水平的核拡散問題(horizontal proliferation)、特に北朝鮮の核能力高度化と攻勢的な核戦略の導入、そしてそれにЕ 대응しようとする日本、韓国、台湾の潜在的な核兵器開発試みは、米中双方の国益を深刻に阻害する問題です。米国から見れば、高度化する北朝鮮の核能力は、全世界の不拡散体制の正当性維持及び核安全保障レジーム強化において非常に重要な挑戦要因であり、中国から見れば、地域内の核拡散問題は台湾海峡における中国の戦略的カードを考慮する上で大きな制約要因となり得ます。さらに、単純な核兵器能力増強に命をかけている北朝鮮が、核安全の次元で細心の注意を払う余裕がないという側面から、北朝鮮と国境を接する中国は深刻な核安全脅威に直面しています。このような文脈で、東アジアの核拡散、特に北朝鮮の核施設に対する核安全問題は、米中双方にとって比較的容易に協力できる共同利益の問題です。

朝鮮半島核問題の当事国として、韓国はまさにこの問題において米中協力を誘導する積極的な役割を遂行できる立場にあります。韓国は地域内の他のどの国よりも北朝鮮が提起する核脅威を最も深刻に受け止めざるを得ず、それに対する対応政策を、独自の核兵器開発、米国の核の傘の強化、先端技術基盤軍事力強化などの選択肢の中で、どのような方向へ進めるか自律的に決定できる主権国家でもあります。また、米中間の新たな核安全保障問題を巡って協力方向を模索する際にも、原発強国(原子力施設保有5位、新規建設共同4位)であり、北朝鮮の意図的な原発施設攻撃脅威の当事国として、米中間の議論が国際多国間レジームの枠組みで進められるよう貢献できます。

対立領域の最小化:核拡散問題の陣営論理化、新疆ウイグル自治区の人権問題とテロ問題の連動

核安全保障・安全問題において米中間には共同利益の領域が確かに存在しますが、それ만큼鮮明な利益衝突の領域も存在します。最も代表的なのが核競争の陣営論理です。東アジア地域内の核拡散は、潜在的に深刻な核安全保障・安全脅威を提起しますが、そもそもその拡散が起こるように駆り立てているのは米中戦略競争論理です。米国の統合抑止力が強化されるほど、中国も相応の軍事能力開発に乗り出さざるを得ず、このような側面から見れば、ロシアや北朝鮮の核兵器は中国にとって資産として認識されることもあります。核安全保障・安全がグローバル市民の生存次元で重要な問題ではありますが、(1)テロ組織による核兵器活用可能性が相対的に非常に低く、(2)自国が「二次攻撃能力(second-strike capability)」を保有することを核心的な国家利益の問題だと考えるならば、核テロに対する共同対応のために中国が積極的に協力に乗り出す誘因は失われます。したがって、核拡散問題が陣営論理に囚われないように、米中両国の対立レベルを適切に管理する必要があります。韓国がこの問題において影響を及ぼしうる余地は少ないですが、少なくとも米中対立を増幅させる方式のポジショニングは避ける外交的選択をすることは重要です。

第二に、米中両国が核テロ問題を議論する際に議題設定に留意すべきです。すなわち、中国が国家安全保障上の核心的利益として挙げている「新疆ウイグル自治区」問題が人権問題と結びつけて提起されることを避け、技術的に「対テロ戦(counter-terrorism)」と「核安全保障」問題を分離すべきです。これにより、米中が最初に行う議論は、できる限り原発に対する防護問題と、大量混乱兵器開発に使用される核物質がテロ組織に流出するのを防ぐための米中の協力策に焦点を当てて議論を進めるべきです。

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■ キム・ヤンギュ_東アジア研究院シニアフェロー。ソウル大学政治外交学部講師。

■ イ・ジョンソク_テジェ大学人文社会学部助教授。


■ 担当・編集:パク・ジス、 EAI研究員

    問い合わせ・編集: 02 2277 1683 (ext. 208) | jspark@eai.or.kr

添付ファイル

  • [미중핵대타협]핵테러방지를위한핵안보구상_김양규,이정석.pdf

*この本文は韓国語で書かれた原文を AI で翻訳したものです。一部の翻訳やニュアンスに誤りがある場合があります。

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